第58章 罪 前編
―――――――――ふと、悠里ちゃんに出会った日のことを思い出した。そうだ。俺は、たしかその直前まで、何かのゲームをやってて、その中で出てきたキスシーン見て、「好意を向けあえるような」関係を、柄にもなく「羨ましい」なんて、思ったんだっけ。
「……、ッ……。」
俺は悠里ちゃんを、自分の身体から少し離した。
―――――――――そうだ。その結果が、これだ。物心ついた時から、俺は『潜在犯』。呪われた人生だった。それが分かっていながら、「普通」の幸せを、それも「恋愛」なんかを望んだ俺への、「罰」だ。
……、そうだった。俺たち『潜在犯』は、そういうふうに、なってるんだった。望めば望むだけ、裏切られる。手を伸ばせば手を伸ばしただけ、その手は傷だらけになる。この『社会』は、そういう仕組みだったんだ。分かりきっていたことじゃないか。不条理は、今になって湧き出てきたものじゃない。だから、俺が、彼女に手を伸ばせば伸ばすほどに、俺は苦しむし、伸ばされた側の悠里ちゃんもまた、害を被(こうむ)ることになるのだ。……なんてよくできたシステムなのだろうか。
「……、秀星、くん……?」
彼女の声が、俺の頭に、さしたる現実感もなく響いた。