第57章 ラヴァーズ・パニック Ⅴ
オーナーが、縢にイチモツを突き立てようとしている。
(あーあ……。俺、こんなキモイ男に、それに、見ず知らずの大男に見られながら犯されるんだな……。)
縢は、万事休すといった具合だ。
(……………。……………………!!ちょっと待て……!)
突然、縢の頭に、一つの案が浮かんだ。
(そうだ!このキモイオーナーと、ロミオだけなら、上手く隙を突けば、コウちゃん抜きでも殺(ヤ)れるかも……!そうだ。何とかして、この邪魔な大男を退(ど)かせれば……!)
チャンスは、決して多くない。成功する確率も、高くはないだろう。それでも、何もしないよりは、このままキモイ男に犯されるよりは、千倍はマシだ。
(イチかバチか……!)
「な、なぁ……?」
縢は、上目遣いでオーナーを見つめた。全ては縢の演技力にかかっている。
「俺さ……。見られると、その……、セックスに集中できないっていうか……。気持ちよくなれないタイプでさ……。できれば、あの男、しばらく外で待っててもらえたり……しない……?その……できれば、俺だって……っ、気持ちよく……なりたい、から……っ。」
最後は、消え入るような声で、出来るかぎり恥じ入るような瞳で、縢はオーナーに懇願した。
(……どうだ……!コレで駄目なら……!)
「……!イイ!イイわよ!!アンタ、今日はもう帰りなさい。報酬は、いつもの口座でいいわね?……ふ、ふふふふ、うっふふふふふふふふふ!今日は楽しもうじゃない、坊や……!!」
オーナーは、興奮しきった様子で、大男を帰らせた。縢としては、大男を帰さずとも、一時的に退室させてくれさえすれば良かっただけなのだが、それ以上の結果が得られたのだ。文句無しだ。
――――ガチャ
大男が退出し、重い音がして、再び扉が閉まった。どうやら、大男は本当に帰ったようだ。縢は、喜びを堪え、オーナーに向き直った。
オーナーは、縢の考えなど何も知らないといった具合で、はち切れんばかりに膨れ上がった自らのイチモツを握りながら、縢のベルトに手を掛けようとした。