第55章 ラヴァーズ・パニック Ⅲ
(……。少なくとも、この室内には男が3人か……。これじゃあ、ドミネーターや武装無しで、俺が向かっても、分が悪い……。少なくとも俺の前にいる奴らは、ナニをしてる腑抜けだけど、それでも本気でかかって来られちゃ、俺の不利、か……。クソ、せめてコウちゃんが一緒だったら、一気にブン殴って解決してやんのに……!……。…………、っていうか、ロミオって、まさかあの変な踊りを披露した、熊男のロミオ?……うげぇ……。声だけじゃ分かんなかった……。)
「オーナー……。いやぁ、そりゃあ、こんな上玉相手にしちゃ、枯れた精力も漲(みなぎ)りますって……!流石、オーナーの紹介です。」
「うふふ、気に入ってくれたなら、あたしも嬉しいわ……。やっぱり、オトコの筋肉って、魅力的よね。」
完全に鼻息が荒くなっているロミオに対して、オーナーと呼ばれた人間が、ゆったりと話し掛ける。
「……、ところで、あの、……、…………、その…………。」
ロミオが、若干口をもごもごさせた。あんなに悲惨なステージを繰り広げていた割に、ロミオの態度は決して大きいものではない。
「なぁに?」
オーナーと呼ばれた人間は、余裕を含んだ声で、ロミオへ返事をする。
(っていうか、オーナーって……。まさか、クラブバーのオーナー?それとも、“こういう”性産業を斡旋(あっせん)している元締めってコト……?クソ、分かんねェな……。)
縢は、目を閉じながら、聞こえてくる音声にじっと耳を傾け、情報を整理しようとしていた。
「さっき、オーナーが連れてきた、あのイイカラダした……、あの男って、味見させていただけるんで……?」
「……、えぇ。いいわよ?」
(―――――――!)
縢は、ビクッとした。もしかして、「あの男」とは狡噛の事であろうか。
「あたしが味見したいのは、アンタの言う「イイカラダ」の男じゃなくって、一緒にいた、オレンジの髪の子だもの……。」
(――――――!!!???)