第52章 ディストピア 後編
呼び鈴が鳴る。悠里ちゃんだ。
「おっ、ナイスタイミング!」
俺は晩飯の支度をしていたけど、一旦おたまから手を離して、出入り口へと向かう。
「お疲れ~。待ってたよ~!」
「お邪魔します、秀星くん。」
「っていうか、別に勝手に入ってきてもいいよ~。どうせ、鍵もかかってないんだからさ。」
「あ、そうなの?……ううん、でも、それは秀星くんに悪いから、いいや。」
悠里ちゃんは、言いながら俺を見て笑った。
……本人には言えないが、さっきまで、いくら夢の中とはいえ、あんなことをしていた相手が目の前にいて、しかも笑いかけてくれているというのは、思っていたよりも罪悪感がある。
「……秀星くん?なんか、疲れてる?」
悠里ちゃんが、今度は心配そうな視線を俺に向けてきた。これはこれで、さらに罪悪感……。
「ううん!まぁ、昨日はまた夜にかけて出動があったからさ。まぁ、軽く片付いたけど。」
俺はあくまで、自然な感じで会話を繋ぐことにした。
「あ~……、やっぱり、疲れてるんだ。押しかけて悪かったかな……。あ、これ、メールに書いたプチシュー。……私、いても大丈夫?迷惑じゃない?」
悠里ちゃんは、いよいよ本気で心配をし始めた。悠里ちゃんは、当然俺の夢なんて知らない。だから、なんかこう……、俺にそんなモノがあるかは謎だが、良心が痛む気がする。
「大丈夫!今日はオフで、昼過ぎまでゆっくり寝てたからさ!久し振りに、10時間以上も寝たから、むしろスッキリしてるぐらい!」
「あ、そうなんだ?じゃあ、お言葉に甘えるね。」
「そーそ!だから早く入りなよ。料理が冷めちゃうよ!もうほとんど準備できてるから、適当に座って待っててよ!」
悠里ちゃんは、嬉しそうに俺の部屋に入って来た。そして、俺の言った通りに、ソファーに腰掛けた。
――――――悠里ちゃんが俺の部屋にいる。ただ、それだけで、俺は……