第45章 御伽話 Ⅰ
「園長、この園のセキュリティは、どうなっているのですか?」
六合塚が、ドローンから端末を取り出し、起動させ始めた。
「え、セキュリティ、ですか……?あ、あぁ……。この園は、先程も申し上げました通り、公用スペースではありません。ですので、お客様には、入場ゲートに設置してあるスキャナーで、フェイスレコグニション(顔認識)と、簡易の色相判定を受けていただいています。ですから、入場時に、誰がどのような色相であったかは、当方で記録として残っています。」
「!――――そのデータ、今すぐにこちらへ回してください!犯人が割り出せるかもしれません。」
六合塚は慣れた手つきで、大容量データを転送するための準備をしながら、真っ直ぐに本田を見た。
「は、はい……!すぐに、本園のデータベースへのアクセス権をそちらに譲渡します……!」
本田は、震える指先で端末を操作している。
「この園のデータベースにアクセスします。監視官、データ解析を本部のラボに支援させます。よろしいですね?」
「頼む。」
宜野座の短い返事と共に、データベースがホロ展開される。あまりにも膨大な個人記録が、リスト形式で一気に表示されていく。
「まぁ、これだけの人数を全部調べるのは時間の無駄だ。この中で、色相の濁りが一定以上の人間をピックアップすればいい。六合塚ならすぐに絞り込めるだろう。」
征陸は、余裕を崩すことなく、空中にホロ展開されていく資料を見つめている。
「……。検索終了。」
六合塚の落ち着いた声が、控室に響いた。