第44章 メイド・イン・ラブ Ⅲ
ややあってから、秀星くんが私の頭を撫でた。やっぱり、私にメイドは向いてないと思う。だって、こうして大事にされている実感が、好きで愛しくてたまらないんだから。
でも、秀星くんから出てきた言葉は、私の想いとは違ったものだった。
「はぁ……。あ~あ、今日は俺、悠里ちゃんにたっぷり甘えちゃったね。」
私の髪を梳(す)きながら、投げかけられた言葉は低く、掠れていた。
「だって、結局ほとんど俺のワガママで、今日1日悠里ちゃんを付き合わせたし。」
「ううん、そんなこと無いよ。私も、秀星くんと一緒にいられて、嬉しかったし、いつもとはちょっと違う秀星くんが見られて、嬉しかった。」
最初は、メイド服なんて言われて、どうしたものかと思ったけど、まぁこれだって、秀星くんと一緒にいられるなら、悪くない。
「そう言ってもらえると、嬉しいよ。」
言いながら、秀星くんは目を閉じた。やっぱり、疲れているんだと思う。再びウトウトし始めた秀星くんを見て、そう感じた。でも、そんな恰好で寝たら、体調崩しちゃうよ。
私は浅い眠りについた秀星くんにそっと掛布団を掛けた。その瞬間、瞼を閉じている秀星くんの口元が、ふわりと笑みを浮かべたような気がした。
私も、疲れちゃった……。
本当はこのメイド服だって、汗で張り付いて少し気持ち悪いけれど、それは後回しにして、今はこの愛おしい寝顔を眺めながら、私も少し横にならせてもらおう。
きっと目が覚めても、私の横には秀星くんがいて、もしかしたらまた、大好きな秀星くんの寝顔があるかもしれない。そう思えば、少し先だって幸せ。
―――――おやすみなさい、秀星くん。また数時間後に。