第39章 ヒトリ
「……っ……、もう……、いいや……」
私は、もう片方のVRグローブも外して、VRゴーグルも外した。PC画面には、エラーメッセージが表示され、「男性」とアバターが睦み合っている一時停止画。……、何だろう。客観的に見てしまえば、白々しい空虚な光景という他、言い表しようがない。
感覚的快感。気持ち良くなかったと言えば、それは嘘になる。でも、気持ち良かったと言うのなら、それはそれで違う気がする。
――――――原因なんて、分かっている。
「しゅーせい、くん……、秀星くん……。」
秀星くんが触ってくれなくなったから、自分で感覚的に慰めていただけ。躰は感覚的に快感を得たものの、肝心の何かが埋まらない。
「秀星、くん……。」
もう、私の中の何かが狂いだしてしまいそう。いや、もうどこかしら狂っているのかもしれないけど。
……もう、私……、我慢できそうにない、よ……。あ……、いや、私、我慢、してたんだ……。私、秀星くんに触って欲しかったの、我慢、してたんだ……。自分でも、ハッキリとは自覚していないつもりでいたけれど、もう自分の中でですら、隠しきれない。
もし、秀星くんが、今の私を見たら、どう思うだろう……。はしたないって軽蔑する?目も当てられない奴だって思う?わからない。わからないけど、あんな風に私に触っておいて、ヤメないで……。秀星くんは、もう私なんて……?
――――――頭の中、もうぐちゃぐちゃ。
もしかしたら、私は次に秀星くんに会ったら――――秀星くんのお部屋になんか行ったら、とんでもないことを口にし始めるかもしれない。そうなったら、もう自分でも止まれる自信が無い。でも、私は自分の気持ちを秀星くんに伝えられるだけの力も、ましてや度胸も無い。
駄目だ。寝よう。
PCの電源を落として、ベッドに入る。秀星くんの顔がふっとよぎる。
なんでだろう。無性に叫びたい。泣きたい。
それでも、私の中にある衝動は、疲れからくる眠気によって、少しずつ収まっていった。
「秀星くん……。」
布団の中で呟いた秀星くんの名前は、ひどく弱々しいものになってしまった。どうしよう。次に秀星くんに会うときに、どんな顔をして会えばいいんだろう……。そんな不安も私の頭を掠めていったけれど、眠気には抗うことができずに、目を閉じた。