第34章 『猟犬』 Ⅳ
「―――――縢!!!」
狡噛の叫び声で、縢はやっと、自らに危険が迫っているらしいことに気付いた。
縢は自らの背後へ振り返る。狡噛は、倒れたままの姿勢でネイルガンを構える犯人に向けて駆け出していた。だがそのいずれも、僅かに遅かった。
――――――ビュッ!
ネイルガンの引き金は引かれ、釘は撃ち出された。
釘が縢の左目付近を掠めた
「――――ッ!!?」
その直後、狡噛の右足が、ネイルガンを構える犯人の右腕を踏み潰した。鈍い音がした。犯人の腕が粉砕された音だった。
「ぐ、あああああああああああああ!!!?」
犯人は、適当にのたうち回った後、力尽きた。
「大丈夫か、縢?」
「――――ッ、ぁ、うん。ありがと、コウちゃん……。」
左目のすぐ横、縢が痛みのあった箇所に手をあてると、その手にはべったりと血が付いた。焼けるような痛み。幸い、今のところ視力に影響はないようだ。それでも縢としては、痛いものは痛い。
「油断してっからだよ、縢。」
そう口にする狡噛の声には、安堵の色が滲んでいた。