第32章 『猟犬』 Ⅱ
三差路まで進んで、コウちゃんと合流する。
「すまん、縢。こっちはこれといって収穫が無かった。」
「ううん。それより、まずは南に行ってみよ。もしかして、手掛かりあるかもだし?早くしないと、逃げちゃうかも。」
「だな。」
コウちゃんと共に、もう陽の落ちきった道路を駆ける。市街地のようにキッチリとは整備されていない地面を蹴って、南へと進む。もうすぐ倉庫に着くか、というところで、センセーから通信が入った。
『慎也くん、シュウくん、一旦ストップ!』
センセーにしては、焦りを含んだ声。コウちゃんも俺も、言われた通り一旦移動を中断する。
「どうした、志恩。」
コウちゃんも、センセーの声がいつもと違うことに気が付いたらしい。周囲を警戒しながら、通信に耳を傾けた。
『慎也くんとシュウくんのところに、2人の近くにいるドローン5台を急行させる命令を出したんだけど、これが言うことをきかないのよ!』
ドローンが言うことを聞かない?それはどういうことだろうか?
「センセー、何言ってんの?」
コウちゃんも、怪訝そうな顔を浮かべている。
『わたしだって、意味が分からないわよ!いつも通りココから遠隔操作でドローンを動かそうとしても、ドローンがこっちの命令を無視して、普通に巡視を続けてるんだから!』
ドローンが本部である公安局分析室からの命令を無視して、巡視を続けている?そんなこと、聞いたことが無い。少なくとも、俺が執行官になってから、そんな状況に出くわしたことなど、ただの1度も無い。コウちゃんなら、何か知っているだろうか。俺は、コウちゃんに視線を送った。コウちゃんは、いつものポーカーフェイスを崩さない。
「……。」
コウちゃんは、ドミネーターを起動させ始めた。
「……コウちゃん?」