第30章 業(ごう)
「今日もごちそうさま。」
「いーよ。料理は俺の趣味だし。悠里ちゃんならいつでも大歓迎!」
言いながら、秀星くんは私の頭に、その右手を伸ばした。頭に触れてくるのかな、と私が思った瞬間、秀星くんはその右手を不自然に引っ込めた。
「次は、いつなら来れそう?」
「うーん……。明日確認して、またメールするね。」
「りょーかい!待ってんね~。忘れないでよ?」
「大丈夫!それじゃ、ありがとう。」
今日も、秀星くんのお部屋にお邪魔して、夕食をご馳走になって、帰路に就いた。相変わらず、秀星くんの「料理」は優しい味で、美味しい。こうやって、ちょこちょこと連絡を取っては、私が秀星くんのお部屋にお邪魔して、仕事終わりに楽しい時間を貰っている。でも最近、気になっていることがある。それは、ここ最近、秀星くんがあまり私に触ろうとしないこと。前は、からかうようにして体に触れてきたり、キスしようとしてきたり……っていうか、キスしてきた。突然抱きしめてきたかと思えば、私の反応を楽しんでみたり。それが、ここ最近はそんな機会がめっきり減っているどころか、ほとんどない。というか、私の身体に触れることが、少なくなってきてる。私が秀星くんのお部屋にお邪魔する頻度は、前と変わらないどころか、むしろ増えてるのに。もしかして、もう、私に飽きてきちゃった……?それとも、他に好きな人ができたとか……?