第22章 ゲーム・パニック Ⅰ
「おじゃまします、秀星くん!」
「いらっしゃい、悠里ちゃん!」
休日の夕方ごろ。今日も、秀星くんのお部屋に来た私。何でも、今日は上等な天然モノの食材が手に入ったということで、「料理」を振る舞ってくれるらしい。「料理」の途中なのか、秀星くんは黒いカフェエプロン姿で迎えてくれた。でも、すぐにキッチンカウンターの中へ入っていって、作業の続きを始めた。私も、出入り口から奥へと足を進める。
「ゴメンね~、悠里ちゃん。すぐにできると思ったんだけどさ~、ちょっと読み違えてて、あと40……、いや、50分ぐらいかかるかも……。」
秀星くんは、作業を続けながら、済まなさそうな声。
「ううん、全然!むしろ、待った方が、お腹も空くから、楽しみにして待ってるね!空腹は最高のスパイス……だっけ?」
「あはは、そう言ってくれると、こっちも作り甲斐があるよ。……、でも、流石に悠里ちゃんも暇だよね。」
秀星くんは、一旦作業の手を止めて、こちらに歩いてきた。
「良かったら、これやってみる?」
「……?」
秀星くんが私に手渡してきたのは、大きめの液晶ディスプレイが付いた、携帯型ゲーム機。テーブルの上に無造作に置かれていたのを、渡してくれた。入って来た時に、同じ機種の色違いが部屋の床に転がっていたのが目についていた。
「ゲームだよ、ゲーム。前に、悠里ちゃんが、やってみたいって言ってたじゃん。」
「……、うん。ありがとう。」
そう言えば、言った気がする。雑談の中で軽く口に出しただけなのに、秀星くんは覚えててくれたんだ……。そう思うと、胸がジンとする。