第2章 迷い蝶
「なんか、アンタ……。」
かがりさんは、困ったようにくしゃりと笑った。私はその表情を見て、何を返したら良いのかも分からなくなった。
「でもさ……、もうそろそろにしておかないと、時間、大丈夫?それに、なんちゃらハザードで、悠里ちゃんの色相も濁っちゃうよ?」
今度は私をからかうように。
「え……、あ……」
時間がやばくなってきたのは本当。でも、サイコハザードなんて、いまかがりさんといることが原因で、そんなのにはならないと思えた。
「時間は……確かに、戻る時間です。でも、今日のことが原因でサイコハザードになんて、ならない自信、あります!多分……」
語尾以外は意気込んで答えた。
「なんか、悠里ちゃんって、変わってんね。」
かがりさんは苦笑した。確かに、変わってるかもしれない。
「はい。なんか、私、今日かがりさんと話ができて、私の中にあるものの見方とか、ちょっと変わったかもしれません。」
「いや、そういう意味じゃないけどさ……、まぁいいや。ま、またどっかで顔ぐらい見れることあるかもしんないし?そん時は気軽に声掛けてよ。」
最後は、かがりさんもすっきりとした顔をして、私を見送ってくれた。
「かがり、しゅうせい、さん……」
管財課オフィスに戻る道すがら、彼の名前を呟いてみた。
胸の奥がほんわりと温かくなったような、そんな不思議な心地がした。