第12章 曇天
私は、荷物をまとめて、私に背を向けたままの秀星くんに、背を向けた。馬鹿な私は、こんな時に、なんて声を掛けていいのか、少しだって分からない。どうして何も分からないのかも分からない。ただ分かるのは、秀星くんが悲しんでいて、苦しんでいて、辛そうだとか、それだけ。それなのに私は、目の前の秀星くんだけで、胸がいっぱいになった。
「―――――うん。ごめん、ね。今日はごちそうさまでした。秀星くんの「料理」、今日もおいしかったよ。また、食べたい、な。じゃあ、お邪魔しました。」
私は、息が詰まりそうになりながら、秀星くんの部屋を出た。出入り口が閉まる音が聞こえる。でも、そんな音よりも、私の頭の中で、秀星くんが言った言葉が、ぐるぐる回っている。――――――「5歳」「サイコパス検診」「治療」「更生施設」「見込みゼロ」「19歳で『執行官』」。もう、それがどういうことなのか、想像もつかない。なんで私はこんなにも何もできないの?なんでこの場を去ることしかできないの?なんで秀星くんを放っておくことしかできないの?なんで私は、何も分からないの?
悔しくて涙が出そうだけど、情けなくて涙も出ない。