第3章 瞳をあけたままで~斎藤一編~
半分意識を失ったような状態でぐったりと横たわる時尾の顔に張り付いた黒髪を退けてやりながら
「無理をさせたな………すまなかった。」
そう言って謝ると、時尾はゆっくりと首を横に振った。
「とても……幸せです。」
そして言う否や気だるそうに起き上がり、時尾の脇に腰を下ろしている俺に向かって探るように手を伸ばして来る。
その手が俺の身体を見付けて、また探るように全身を弄った。
俺は時尾が何をしたいのか理解出来ずに戸惑いながらされるままになっていると、時尾は唐突に俺の牡茎を握り躊躇無く口に含む。
「なっ………何を?」
心底驚いて俺が腰を引いても、時尾は口を使う事を止めない。
「止めろっ…」
時尾の肩を掴んで俺の身体から引き離すと、不思議そうな顔をして小首を傾げた。
「あの……どうして……?」
瞬間、俺は時尾の身体を抱き寄せた。
「一さん?」
仕込まれたのだ……と思った。
こうする事が当たり前のように。
時尾にそんな事をさせた奴等を全員殺してやりたかった。
「時尾………時尾……あんたは…こんな事をしなくて良いんだ。」
「でも………」
「良いんだ。」
時尾を抱き締める腕に力が籠り、俺の身体は怒りで震えた。
すると時尾の腕が俺の背後に回され、幼子をあやすように俺の背中と後頭を優しく擦った。
「大丈夫ですよ……一さん。……大丈夫。」
震える俺を怯えているとでも思ったのか、時尾は何度も大丈夫と繰り返し慈しむように俺の身体を擦り続ける。
本当なら大丈夫だと慰めてやるべきは俺の方なのに、この時尾の強さと優しさに痛い程胸が締め付けられた。
「時尾……もう俺以外の男にあんたを触れさせたくない。
俺だけのものになって欲しい。」
「私で……いいんですか?」
不安そうな声で答える時尾をそっと押し倒し
「時尾でなくては……駄目だ。」
次の言葉を言わせないように急いで口付けた。