第3章 瞳をあけたままで~斎藤一編~
「…………ん…」
時尾の口から甘い吐息が漏れ出して、俺は僅かに唇を離す。
「つ……次は…………し…舌を入れるっ……から……」
自分の欲望を言葉で告げるのは顔から火が出そうな程恥ずかしい行為だったが、自分勝手に突き進んで時尾を怯えさせる事は絶対に避けたかった。
すると目を閉じたままの時尾の紅い唇が微かに開かれる。
またそこに唇を合わせ、ゆっくりとその中に舌を差し込んだ。
くちゅ…という淫靡な音を立てて舌を絡め取ると、俺に縋り付く時尾の手に力が籠る。
おずおずと俺の舌の動きに応えようとする時尾が愛おしくて堪らない。
時尾の全てが欲しい、俺の全てを時尾に注ぎ込みたい……その想いが際限無く沸き上がり、俺は時尾の両肩を掴んで少し身体を離した。
「時尾……次は………」
俺がまた自分の欲望を告げようとすると、時尾はくすりと笑って言った。
「いいですよ。斎藤さんにされる事なら何も怖くないです。
全て……斎藤さんにお任せします。」
「………良いのか?」
「はい。斎藤さんの好きなようにして下さい。
いいえ……私が…そうされたい………」
言葉終わりを待たずに俺は時尾を抱き上げた。
「優しく…するから……
あんたを怯えさせるような事は絶対にしない。」
次の間に敷いてある布団へ時尾を運び、其処にそっと横たえる。
その上に覆い被さり
「嫌だと思ったら俺を押し退けろ。
そうすれば…直ぐに止める。」
そう言ってから時尾の首筋に顔を埋めた。