第3章 瞳をあけたままで~斎藤一編~
「さて……この女をどうするかだな。
まさか、放り出す訳にもいかねえし。」
副長が困り果てたように言った。
「それに…この女も間者である可能性は拭えません。」
俺がそう言うと総司がからかうように笑った。
「相変わらず一君は容赦無いねぇ。
流石にそれは無いって僕は思うけどなぁ。」
「でも放り出せばまた長州の奴等に捕まっちまうかもよ?
そうなると兄貴の事もあるし、この娘危ないじゃん。」
平助が何とかしてやりたいという様子を隠しもせず訴える。
暫く全員が無言で頭を抱えている間も時尾は微動だにしなかった。
「まあ、斎藤の言う事も平助の言う事も尤もだ。
……仕方ねえ。暫くこの女は此処で預かる。」
全員が驚いた顔を見せたが、それでも副長の決断に異を唱える者は居なかった。
「間者の可能性も勿論だが、そうで無くても
長州の奴等が取り返しに来るかもしれねえ。
だから交代で一日中監視しろ。」
「ああ……やっぱりそうなるのかぁ。」
総司が大袈裟に溜め息を吐いた。
「何だ?文句あるのか?」
「いいえ。やりますよ。」
副長が睨み付けても、総司は全く気にする様子もなく笑った。