第5章 僕は風 君は空~沖田総司編~
目を覚ますと屯所で生活していた頃の自分の部屋に寝かされていた。
僕の部屋がそのまま残されていた事に、近藤さんが言ってくれた「待っているから」という言葉が本気だったのだと気付かされる。
薄明かりの中、ふと視線を横に向けると何故か僕の傍らに新選組を出た筈の一君が腰を下ろしていた。
「一君………」
「大丈夫か……総司。」
僕はどうしても一君に言わなくちゃいけない事があった。
「ごめんね…一君。
約束したのに、有希ちゃんの事……守れなかった。
本当にごめん。……ごめんね。」
「何も言わなくて良い。」
苦しそうに眉をひそめた一君の手が僕の額に触れる。
「まだ夜中だ。ゆっくり休め。」
温かい一君の手の感触がとても心地好くて……僕はまた眠りに落ちた。
次に目覚めた時、部屋はまだ薄暗くて僕の傍らにはもう誰も居なかった。
僕はゆっくりと起き上がり、刀掛台にあった清光を手に取ると誰にも気付かれないように静かに屯所を脱け出した。