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【SS合同企画作品】それは秋の幻だったのか

第5章 読書?の秋


「秋野。行ってこい」

誰の名前が呼ばれるか皆そわそわしていた。ご指名を受けた私は今、泣きたい気持ちでいっぱいだ。
もうどのくらいここにいるのだろう。
誰もいない書庫に、ひとりぼっち。

なぜか見つからない冊子をひたすらに探している。
もう文字の山なんて嫌いだ。
窓から茜色の光が差し込む。なぜ秋の夕日は、なんでもない空間を幻想的にさせるのだろうか。
この現実から、逃げ出したいよ。





カチャリと扉が開く音がする。
「お疲れっス!」
げ。なんで黄瀬くん?隣の担当の同僚。きっと見てたんだ。実は結構、苦手。
「1人じゃ大変だろーなと思って」
ポンと投げられるのは缶のホットココア。やばい。この優しさには、ちょっと泣きそうになる。








黄瀬くんは手伝いに来たと言う割に、窓に背をつけながらパラパラーっと適当に束をめくってる。

「そんなに頑張らなくてもいんじゃないスかー?」

うるさいなぁ。私は上の書物を取ろうとハシゴに登ろうとする。

「…こんな日に限って、スカート。俺ハシゴ、支えらんないっスよ。あ、もしかして誘ってるんスか?」
もう、ほんっとにうるさい。

「ソラっち」

「手伝わないなら帰って!」
そう大きな声を出した時、もう彼は目の前に。

「泣きそうな顔、しないでよ」

さりげなく私の手に重なる、彼の大きな手。
秋の夕ざしは、彼の美しい顔立ちをより美しく演出する。
近いその距離に、私は思わず後ずさる。
きっと頬を赤く染めていた。
夕日の色がそれを誤魔化してくれている、よかった。


「じゃっじゃーん」
「あ!」
彼が手に持つのは、探していた書類。
「いつの間に!?」
「実はうちの担当の書類に紛れて…
「なんですぐ言わないの!?」


怒る私にの目の前にぐっと迫る、黄瀬くんの顔。

「だって会社で2人きりになれる場所なんて、めったにないっスよ?」

目の前がくらりとする。彼の黄色の髪を茜色に染める光が熱い。燃えるような瞳に、吸い込まれそうになる。






「ソラっち、そろそろ気づいてよ。俺の気持ちに」







気づいてないんじゃないよ、信じられないの。



私が彼を苦手な理由。
私をドキドキさせて、いつも困らせるから。



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