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【SS合同企画作品】それは秋の幻だったのか

第4章 読書の秋2


秋野ソラ、高校3年生の秋。
つまり、受験前の追い込み期。

今日は私の年下の彼氏、清田信長が部屋に遊びに来ている。バスケ部の彼は平日は遅くまで練習、週末も朝から夜まで練習。今日は試合前の調整で、早めに練習を終えたようだ。


「ソラー。久しぶりに時間あるんだから、遊び行こうぜ」
「うーん」


私は生返事をすると、先ほどから解けない数学の問題に手こずっている。


「貸してみ?」
信長は私からペンを取ると、さらりと問題を解いていく。
「うっそ」
「数学は、本能で解くんだよ本能で。カッカッカ」
「くっ悔しい」










それからも信長の遊びに行こうの誘いを断り続け、私は黙々と問題を解き続けた。

あれ、なんか静か。彼をふと見る。
すると真剣に、大きなビーズクッションに背をもたれて部屋にあった本を読んでいる。
長い前髪から覗く真剣な顔は、バスケしてるときと同じ目をしてる。
こんな面もあるんだ。胸が踊った。
私はご機嫌で勉強を続けた。










静かに時が流れた。
彼をふと見ると、あ。
お腹の上に本を置いたまま、寝ている。
可愛い。
私は彼に近づいた。
まずは本を片付けて。そしてブランケットを掛けてあげる。
寝顔を見ていたら、触れたくなった。
頬に手を伸ばす。
するとパチリと目を覚ます彼。
伸ばした手を掴まれる。

「寝たふり?」
「いいから。来いよ」





真剣な目が、私を見つめてる。








私はおとなしく、彼の腕に包まれている。
2人はビーズクッションを枕に、小さく抱きしめ合っている。

「やーっと捕まえたぜ」

細いけど逞しい。大きな腕の中。信長の熱い体温が心地良い。胸がドクドクと波打つ。


「あ、本当に、眠くなってた…」
「本なんて慣れないもの読むから」
「ちげーよ。ソラが、あったかいから…」

スースーと寝息が聞こえてくる。
眠る彼の頬にかかる長い前髪を、耳にかけてあげる。
そして触れたいその唇を、優しく一筆撫でた。









私も、眠たく、なってきた…
穏やかな秋の日差しのせいだろうか。

受験が終わったら、バスケ、観に行くからね。
たくさん一緒にいようね…

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