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【SS合同企画作品】それは秋の幻だったのか

第3章 読書の秋





『戦場を駆け抜けるは金色の髪の将。彼は誰のため戦うのか...』




通学に使っている電車。始発に近い駅から乗車する私はイスに座り、本を読むのが決まり事。この本はまだ読み始めたばかり。私は序盤から世界に惹きこまれている。

到着駅のアナウンスが流れる。でも私は、その音にすら気がつかない。肩を叩かれる。びくりとする。
「三原駅ですよ。あなたの制服、ここではないでしょうか」
はっとする。ドアが閉まりそうだ。目の前で柔らかく微笑むのは、スーツを着た金髪の男性。
「あ、あ、ありがとうございます!」
私は荷物を持ち急いで駆け出した。


次の日、昨日と同じ車両の同じ場所に座る。
お礼を言わなくちゃ。
停車して人が乗り込む度にキョロキョロと見渡す。私が乗車してから2駅目。
あ、きた。
すぐ近くに立っている彼。いつも彼は、ここにいたのだろうか。



立ったまま、器用に本を読む彼。
幼く綺麗な顔をしているのに、ピシッとしたグレーのスーツはよく似合っている。

あれ、その表紙、私が読んでる本と一緒。


「あの」
「昨日は遅刻せずに済んで、よかったですね」
「あ、ありがとうございました。あの、その本」
「あなたが夢中になるほどだから面白いのだろうと思い、買ってしまいました」

なぜ今、どきりとしたのだろう。
まるで私に興味を持たれたような錯覚。

「私は隆景。名前は?」
「秋野ソラと言います」
「ソラ。いい名前ですね」

金色のふわりとした髪。白い肌に柔らかなまつげ。
彼はまるで、この本の主人公のよう。


「この本、読み終えましたか?」
「いいえ」
「... この本の結末を教えて差し上げましょうか?」
「え?」
「なんてね」

『まもなく、三原駅、三原駅』

停車のアナウンスが鳴る。


「よかったらまた、本の話につきあってくれませんか」
「あ、は、はい!」




帰宅後気になって、本を最後まで読んだ。
彼が剣を振るうのは、殺伐とした乱世で出会った、愛しい女性を守るため。




彼と彼女の結ばれるきっかけは、彼女が本を読んでいるときだった。



『その本の結末を教えて差し上げましょう。あなたと私が、結ばれるのです。だからこちらを、向いてください』


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