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【SS合同企画作品】それは秋の幻だったのか

第12章 写真


1年前の、この季節。あのときソラが見せた寂しそうな笑顔を抱きしめたかった。だけどその想いを堪えた。
会えなくなるんだ。ここで優しくすれば、この先彼女も俺自身も辛い思いをする。楽しい思い出だけ残すべきだろう?


「室ちん、その写真の子誰なのー?」
「…アメリカの友人」

日本にも才能ある奴らが転がっている。苦しくてどうしようもない日、悔しくてどうしようもない日は、幼い頃ソラと2人で撮った写真を眺めて、彼女の笑顔に励まされる自分がいる。



彼女のためだと、抱きしめたい衝動を堪えたはずなのに。
彼女の匂い。
彼女の声。
彼女の笑顔を思い出しては、あの日を後悔している。
秋はこんなにも、憂いを帯びていただろうか。
舞い落ちる紅い葉がそうさせるのか。
今すぐあなたに、触れたい。






ある日の練習直後、監督から呼び出しをくらう。日本で、ケンカした覚えはないんだが。
「お前に客だ。随分と遠くから来たようだぞ」
俺に客?まさか。でも脳によぎるは、あの子しかいない。

期待に高鳴る鼓動を抑えなくては。その理性が働く前に、足はすっと走り出していた。
汗をかいたロンTのまま。バッシュのまま。体育館の扉を開ける。


そこには、待ちぼうけしていたソラがつまらなそうに立っていた。俺の顔を見るなり笑うと、ハグを求める。
俺は思い切り抱きしめた。後悔を取り戻すように。痛いよと苦しそうなソラ。ずっと会いたかった。ハグなんかじゃ、足りないんだ。

「どうしたんだ?」
「親の出張。ついてきちゃった」
はにかむソラは、会えないわずかな間に大人びたような気がする。
「これ渡そうと思って。会いに来た」
ソラが差し出すのは1枚の写真。最後に2人で撮った写真。

「ソラ」

ずっと会いたかった人の、名前を呼んだ。
もう、後悔はしない。

「ソラ。側にいてくれないか」
「…そう、できたらいいね」
「するのさ。俺はどこにいたって、ソラを想ってる」

俺の言葉に頬を赤くするソラ。困らせたかな。今は構うもんか。
「ソラ」
彼女の髪を、頬をさらりと撫でる。

「写真なんかじゃ足りない。ずっと、触れたかったんだ」

抱きしめる。もう離さない。
これからも、俺の腕の中に。

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