第3章 Hurt
「ニノ君の彼女さんって、どんな人なの?」
正面に座ってラーメンをすするニノ君に、私は興味本位で質問を投げかけた。
ニノ君は麺を飲み込むと顎の下で手を組んで、ニコニコとこっちを見た。
「可愛い人です。あ、いや、綺麗な人、の方が合ってるかな。中身は可愛いです。」
「へぇ~、美人さんなんだ!」
本当に幸せそうに話すニノ君はなんだか子犬みたいに可愛くて、私もニコニコ笑顔になってしまう。
すると今度はカレーを食べている翔君が隣から話に入ってくる。
「同い年?学生?」
「なんか翔さん、小姑みたいですねぇ。」
「っるせ!教えろよ~!」
眉をひそめるニノ君に、翔君はスプーンを突きつける。
ニノ君は両手を上げて降参のポーズを取っているものの、内心は彼女ののろけがしたくて仕方ないような雰囲気。
私もパスタを巻き取りながら耳を傾ける。
「年は2個上で、近所の女子大のミスキャンパスです。」
「「えぇ~!?」」
近所の女子大と言えば容姿端麗、頭脳明晰で他の女子大とは一線画していることで有名。
そんなお嬢様学校のミスキャンパスを引っ掛けるとは…。
私と翔君は揃って驚きの声を出してしまう。
「ちょっと、静かにしてくださいよ。恥ずかしいなぁ、もう。」
「だ、だって…」
「あそこの女子大じゃレベル高すぎだろ!どうやって掴まえたんだよ!」
動揺を隠し切れない私たちに、ニノ君はニヤリと笑って「秘密です。」と答えた。
「それで?あなたたちの方はどうなんです?」
ニノ君は再びラーメンに手をつけ始め、麺に息を吹きかけて冷ましながら目だけこちらに向けた。
「どう…って?」
本当に私はわからなくてキョトンと首を傾げた。
それに対して翔君は、妙に落ち着き払った声で答える。
「俺らはただの幼馴染。幼稚園からの付き合いだからいつも一緒にいるのが癖になってんの。」
あぁ、そういうことか…。
私はまた、高校時代に経験したことのある胸のざわつきを感じて、思わず心臓の辺りを押さえた。
「…小雨ちゃん?大丈夫ですか?」
「…え、あ、あぁ。ごめん、大丈夫、なんでもないよ。」
ニノ君が心配そうにこちらを見ていた。
私は取り繕った笑顔を作り、再びパスタを巻き始める。
隣の翔君も手が止まってる。