第4章 現状
主人公視点
どうやらもうすぐ、修学旅行があるらしい。教室内はその話で持ちきりだった。
「鶫ちゃん、一緒に班組もう!」
カエデがそう言ってくれたが、私は一緒に班が組めない。
「すまない、修学旅行の一日目は仕事が有って行けないんだ」
そう、あの馬鹿のせいで私が後始末をしなくてはならなくなったのだ。
折角カエデと一緒に居られると思ったのに。
「悪いが他を誘ってくれ」
言うとカエデは残念そうに眉を下げた。
申し訳なく思うと同時に、少し嬉しかった。不謹慎だとは解っているが、それでも嬉しいことに変わり無い。
「皆さん、先生が修学旅行用にしおりを作ってきました!」
タコが手にしているのは、アコーディオン並の分厚い辞書。ではなく、修学旅行のしおり。
「おい、タコ。しおりとは腕力を鍛えるためにも使えるのか?」
「どう考えても違うから!」
「…………違うのか?なら何のためにあの大きさなんだ」
「知らないよ!」
まるでしおりの用度が分からない。
「備えあれば憂いなしと言います。もしも事故にあったら。誘拐犯に捕まったら。通り魔が現れたら等、色々なことに対応出来るように、先生徹夜して作りました」
有無を言わせぬ速さと強引さで、私の手元にもしおりが置かれている。
「要らない」
「そんな事言わずに。持っていて損は有りませんよ」
「私はプロの暗殺者だぞ?ターゲットの君に心配されてどうする」
「解っています。でも先生としては、それ以上に貴方は私の大事な生徒です」
驚きに目を見開いた。生徒なんて言われたのは初めてだ。
「ふんっ!せいぜい足下を掬われないように、気を付けるんだな」
やはり私は素直になれない。胸の奥がどこか温かく感じたのに、嬉しいと素直に表現することができなかった。
「鶫ちゃんに殺せんせーは殺れないよ」
「黙れ赤羽業。このしおりで殴るぞ?」
「嫌だよ。そういう暴力は法律で禁止されてるんだよ?あれ?知らないの?」
………………。
法律と言う言葉に心臓が痛くなった。
実感する。私はこの教室にいる彼等とは、何処まで行っても相容れることの無い存在なのだと。
だが、そんな自分の中身に触れられたくなくて、無言でしおりを赤羽業の頭に直撃させた。
「黙れと言っただろう?その耳はお飾りか?」
そしてまた誤魔化した。私は卑怯だ。