第14章 記録.14
「部屋、戻る?」
「...ま、だやだっ。」
「じゃあ、なんで泣くの?教えてくれなきゃ僕はどうしようも出来ないよ」
「....だって...」
言葉につまる夏芽。
問い詰めても仕方のないことぐらい、わかってる。
夏芽は問い詰められるとそれを追い詰められている意識に変わってしまうから。
「ごめんね、ちょっと意地悪だった」
ギュッと抱きしめてあげる。
「しょっ、ま....」
僕は知ってる。
夏は、ときどき人を惑わせること。
だから夏芽がこうして甘えて来たりすることは、きっと夏のせいなんだ。