第4章 街へ
突然のアッシュのその一言に、ゼロは僅かに片眉を上げた。
「……あいつを此処に連れて来たのはあんただろう。5年も前の事なのに、詳しい情報は何も話していない。……あまりにも謎が多すぎる」
「……何が知りたい?」
ゼロ自身、不思議に思っていた。普段は寡黙なこの青年が、こんなにも饒舌になるのは滅多な事ではない。第一、リンネの話を5年も経ってから聞くなど、あまりにも不自然だ。
「あいつの……リンネの、此処に来る前の話だ」
「それを知って、お前はどうするつもりだ?」
「……別に、どうもしない。ただ気になっただけだ」
「…………そうか」
そしてゼロは話し始めた。5年前、彼女が此処に来る前―街で彼女を助けた事を。
「あいつは昔―、親共々金持ちに買われた。
街の地下室に、10年近く幽閉されていた」