第2章 始まりのシンデレラ
混乱の記者会見から1週間。
生中継のニュース番組や、翌日には新聞に報道されていて、あちこちで「嵐に新メンバー加入!」の文字を見た。
もちろん私もニュースを見たが、メイクさんの力とウィッグで別人のようになっていたため、誰にもバレていない。
あの日はオロオロする私を嵐の皆さんがサポートしてくれた。
お礼を言いたかったが、その後も皆さんはお仕事が詰まっているようですぐにいなくなってしまった。
私の方もモデルやメイドはカモフラージュの為に続けることになり、合間にダンスレッスンや歌のレッスン、更には演技指導として男らしい振る舞いのレッスンを受けている。
テレビ出演などはまだ無く、今度の秋から始まるツアーでお披露目となり、正式に仕事が始まるとのことだった。
「あめちゃん、最近疲れてなぁい?」
「ほぇ!?」
閉店作業中、メイド長が私の顔を覗き込んだ。
私は箒の柄に顔を乗せてボーっとしていたので、急に声を掛けられてビクッと肩を揺らした。
「またボーっとしてたでしょ。」
「す、すみません…。」
あの時の電話の内容は極秘にするように言われたので、メイド長にはテレビ局の方からお礼の電話だったと伝えた。
私の周りに真実を知る人は誰もいない。
「モデルさんの方が忙しいのかな?何かあったら聞くからね?」
「はい…。」
言えない…。
嵐のメンバーになって、死ぬほど忙しいレッスンスケジュールを組まされて、メンバーとはあれから顔も合わせていないしどういう接し方をすればいいのかわからない、なんて。
言えないよ…。