第5章 運命共同体のシンデレラ
翌日、朝からモデルの撮影をした私は急いで会場へと向かっていた。
「うわっ、ちょっと押してるな…。」
携帯で時間を確認し、慌てて車に飛び乗る。
コンサート中は近場であればスタッフさんが車を出してくれる。
車内でメイクや着替えをできるところまで終わらせて会場入りするのだ。
「参ったな…道が混んでるよ。」
運転手のスタッフが、ブレーキランプで真っ赤になった道を困ったように眺めている。
私も窓のカーテンを少し開けて周りを見てみた。
確かに渋滞している。
「事故ですかね?」
着替えた衣装を整えながら、スタイリストさんが運転手に声を掛けた。
「なんだろうね~。開演に間に合うか微妙なところだな…。」
運転手さんが腕時計を見ながらナビを動かす。
私は相変わらず後半からの出番なので、最初に間に合わなくてもコンサートは可能だ。
しかし、到着時間が分からないとなると自分の出番にも間に合うかが不安である。
「ここから走りますか…?」
無理だとわかっていたが、一応提案してみる。
すると、スタッフ全員私の方を見て苦笑した。
「その格好で?」
「ステージ衣装、派手だよ?」
確かに。
ギラギラのスパンコールでぎっしり飾られたこの衣装では出歩けない。
「…ですよね。」
「まぁ、しばらく待ってよ!あと少し動いたらこっちの裏道からすぐ着くからさ!」
「…はい。」
この「あと少し」が長かった。
待っている間に開演時間となってしまい、会場のスタッフからの電話が絶えず入り、こちらはヤキモキしながら裏道に差し掛かるまで待った。
「よっしゃ!ちょっと飛ばすよ!」
ようやく裏道に入った時、運転手はそういうが早いがスピードを上げた。
今までが遅すぎたせいか、ここから会場までの道のりは本当に一瞬のように感じた。
「着いた!はい、急いで急いで!」
運転手が会場の裏口に車を止めると、裏口にはすでにマイクとイヤモニを持ったスタッフが待っていて、私は急いで車を降りると、それらを受け取りながらステージまで走った。
「本当にギリギリでしたね!あと2曲で出番です!」
「ありがとうございます!すみません…!」
奈落のブースに入り、飲み物を軽く飲んで喉を潤す。
それから、いつものように頬を叩いて気合を入れた。