第4章 王子になったシンデレラ
いつものスタイリストさんはすぐに違う衣装を用意してくれた。
さらしがなくても体系がわからないような、だぼっとした衣装だ。
本来は次の曲が終わってから着替える予定だったものだが、他のメンバーも合わせて着替えることになった。
これまでの楽しい気持ちが一転、申し訳なさでいっぱいになってしまった。
雅君はその後も裏に入るたびに心配してくれた。
でも、そのことも私には心苦しくなる要因にしかならなかった。
その後、過呼吸はすっかり収まり、なんとか初日公演を終えた。
楽屋に戻ったメンバー達に続き、私も着替える前に楽屋に立ち寄る。
「お疲れー!」
全員、口々に労いの言葉を掛けてくれる。
私はドアを締め、そのまま頭を下げた。
「今日は、ごめんなさい。はしゃぎすぎて、衣装の変更させてしまって…。」
心のままに歌って踊って、それで過呼吸を起こして。
情けない。
みんなの顔を見れなくて、私は頭を下げ続けた。
「もういいって。衣装は変わったけど、滞りなく終えたわけだし?」
私の肩に手を置いて、頭を上げさせたのは翔君だった。
私が目線を上げると、翔君は笑っていた。
いや、翔君だけじゃない。
みんな、笑顔でこっちを見ていた。
「ま、デビューなんてそんなもんですよ。」
「初日は何が起こるかわかんないからね、気にすんな。」
和君も潤君も、そうやってフォローしてくれる。
「逆に言えば、ファンの皆がそれだけ盛り上げってくれたっていうことだよね。」
「リーダー良いこという~!」
智君、雅君もシャワーを浴びる準備をしながらそう言う。
すると今度は目の前の翔君が両肩を掴んでしっかりと目線を合わせてくる。
「俺らはもう、今日から正式に運命共同体。
小雨に何かあったらサポートするから、俺らにも何かあったら、小雨もサポートしてな。」
「…もちろんですっ!」
私は翔君の言葉が嬉しくて、はにかんだ。
今日の反省は明日のバネ。
明日からはもう少し落ち着いてステージを見よう。
「ほら、じゃあ小雨ももうシャワー浴びて帰んないと。明日は朝一で仕事あるんでしょ?」
私は翔君に背中をポンっと叩かれ、メイク室へと促される。
「っと、そうだった!それじゃあお先に!今日はありがとうございました!」