第3章 現実のシンデレラ

「へ～。その写真ってお店で撮影するの？」
「あ、そうですね。一応プロの方雇っているみたいです。
でも撮影できる日が決まっているので、その期間に撮れなかった人は自分で写真を用意しないといけないんですよ。」
「あら！じゃあ小雨君、撮影の時間取れないんじゃない？」



メイクさんは今度はアイラインを引きながら驚きの声を上げた。
私は「そうなんですよね～。」と困ったような、困っていないような、曖昧な返事をした。
モデルの撮影現場で撮影してもらうわけにもいかず、今回は時間を見つけて適当な場所で撮影してくるつもりでいたからだ。
しかし、アイラインを引き終わって目を開けると、鏡越しにニヤニヤと笑うスタイリストさんが視界に入った。



「な、なんですか…？」
「ここで撮っていきなよ！」



「ジャーン！」っと自分で効果音を付けて、後ろ手に隠していた真っ赤なチャイナ服を私に見せつけてくる。



「えぇ！？な、なんでここにチャイナが…！
って、で、でも悪いですよ…私、嵐になったばっかりで、まだ何もできないひよっこなのに…そんなプライベートなことで皆さんの手を煩わせるわけには…」
「だーいじょうぶよ！会報の撮影はみんな小雨君の事情知ってる人ばっかりだし！」
「で、でも…」



メイクさんにも後押しされ、「小雨君の手間も省けるし、撮影のついでに数枚撮るくらいじゃこっちとしては何の迷惑にもならないわよ。」と強引に話を進められてしまった。
ちなみに衣装は常に何種類か用意されているらしく、チャイナはその１つだったらしい。



ひとまず会報の撮影に向けてメイクを終わらせ、男モードに入った私がスタジオ入りするや否や、メイクさんとスタイリストさんはカメラマンに話を付けて撮影許可を得ていた。




別室から準備を終わらせた嵐の面々と合流し、全員がカメラの前に立って位置を決める。
そしてシャッターが次々と押されていく。



「何、小雨、この後個別撮影あんの？」



潤君がポーズを取りながら横から声を掛けてきた。



「うん…嵐の、じゃないんだけど…」
「え？どういうこと？」