第2章 始まりのシンデレラ
それは女の子を抱くような優しいものではなく、男同士で健闘を称え合うような、そんな力強い抱擁。
大野さんの腕に収まった私は、次に大野さんから背中を2,3回叩かれた。
「ダンスお疲れ。」
頭上から大野さんの声が聞こえる。
私は呆気に取られていたが、すぐに我に返り、同じように大野さんの背中を叩いた。
「お疲れ様ですっ!」
身体を離すと、お互いに笑みを溢す。
すると今度は肩に重みを感じた。
誰かが私の肩に腕を回している。
「な~るほどっ!それじゃ俺も仲良くしてもらお~っと!」
どうやら相葉さんである。
身長差のせいで、相葉さんが私に掛けている体重がすごく重く感じる。
「お、重いです…!」
「敬語止めたら軽くしたげる!」
「えぇ!?そんな急に…!」
「ほら、早く早く~」と相葉さんに体重を掛けられ続け、ついにバランスを崩した私は相葉さんを道連れにころけてしまった。
しかし、すぐに誰かの手が伸びてくる。
「ったく、相葉ちゃんは加減をしらねーな。」
この声は、松本さん。
私は恐る恐る、その手に自分の手を乗せた。
すると、いとも簡単に立ち上がらせてくれる。
「ま、でも相葉ちゃんの言ってることには賛成かな。
これからすげぇ短い期間で俺らの仲間入りを果たすわけだし。
形からってわけでもないけど、敬語はまず止めてもらわないと。」
「あの、でも松本さん…」
「その“さん”付けもやめること。」
松本さんは私の言葉を遮って、人差し指で私のおでこを突っついた。
「ライン参加させますけどいいですかー?」
また今度は遠くで携帯をいじりながら、なぜか私の携帯もいじっている二宮さんが見えた。
「あ、それ私の携帯…!」
「今時ロックかけてないんですか?無用心ですね~。」
慌てて携帯を取り返そうとすると、今度は櫻井さんが携帯を取り出して行く手を阻んだ。
「俺らのグループライン、全然稼動しないけど。ま、連絡先知らないよりマシだよね?」
グループに強制参加させられた私のラインIDが櫻井さんの携帯に登録されたようで、その画面をわざわざ私に見せてくる。
「今のお気持ちは?」
「…嬉しい、です…。」
あの会見から数ヶ月。
これはまだ、“本物”ではないかもしれないけれど。
やっと認められ始めた気がした。