第4章 父親
「お前さ、お父さん嫌いなの?」
え…。
「嫌い…じゃない」
「なんでお父さんにキャラ作ってんの」
「関係ないじゃん」
「ある」
…ないよ。まったく。
「これは、私の問題。首突っ込まないで」
「嫌だ」
「なんで…」
「彼氏だから」
「そんなの…。倉野君、前、面白がって私と話してたじゃん。何?付き合いたいってそういうのが楽しいからなの?」
…ちょっと。何言ってるの。
「そんなノリで近づいてほしくないんだけど」
そんなこと言うつもりないのに…止まらない…!
「…前は、そうだったのかもしれねぇ。でも、今は違う。お前が悲しんでるとことか、悩んでるとことか、何かを抱え込んでいるところとか もう、見たくねぇんだよ」
倉野君…。
…。
「何か私変わったかもって自分で思ってる」
「…?」
「今までだったら絶対相談しなかった。でも、倉野君は…今なら信じれるから」
ほかの人は、まだ無理かもしれないけれど。これから…頑張る。
「お父さん。嫌いじゃないよ。これは本当。…でも、私のためなのかもしれない。仕事で忙しいのは。お母さんも天国へいっちゃったし。大変なのかもしれない。…でも…さ」
…でも。
『お母さん、お父さんきてない?』
『うん。しょうがないのよ、忙しいから』
でも、
お父さんは、お母さんと結婚したんだよ?
心配…してるよね。
お父さんは、お母さんのこと好きじゃないの?
だから、病院に来ないの?
「なぁ、今いるの?お父さん」
「え?うん家にいるけど…ってちょっ!」
急に倉野君が走ってしまった。
学校とは反対方向に。
あっちは…私の家!?
ピンポーンピンポーン
「はい、君は…昨日の」
「あの」
「おじさんは、本城のこと嫌いなの?」
「え?」
なぁ…。
「…そんなわけない」
「じゃあ、ちゃんと見てるの?本城のこと」
「何言って…」
「本城は、迷惑掛けたくないから無理して笑ってるんだ。心配かけたくないからって。昔、つらいことがあったのに。あんたはそれを知ってるの?友達に裏切られて誰も信用できなくなって、唯一信用していた母親を失って。それに、気付いてた?」