第4章 ホワイトリスト
最初に異変に気がついたのはローだった。
(アイツ、どこ行った…?)
食後、いつもなら船長室に来てローの研究の手伝いをするはずのモモが、いつまでたっても現れない。
モモは例の発言からローのことをずいぶん警戒してるようだったから、それで部屋を訪れないのかと思っていた。
だが、真面目な彼女がこんなに時間がたっても姿を見せないのは気がかりだった。
(それに、食事の時のアイツは少し様子が変だった。)
いつもより手の込んだ料理。
それから片付けの時に見た微笑みが頭から離れない。
「オイ、お前ら。モモを見なかったか。」
「そういえば見ないスね。」
「夕暮れ前に会ったけど、ボクもそれから見てないな…。」
それは数時間前のことだ。夕日はとうに沈んでいる。
「船長、たいへんです! 買い出し用の小舟が一隻ありません!」
姿が見えないモモ。
消えた小舟。
それが意味するのは…。
「アイツ…!」
ひとりで船を降りたのか!
「許さねェ…ッ。ベポ、船の速度を上げろ!まだその辺にいるかもしれねェ、他のやつらは目を凝らして探せ!」
「「アイアイサー!」」
その頃、モモは無事目的の島へ上陸することが出来た。
(良かった、遭難したらどうしようかと…。)
船を岸に泊め、ロープをくくりつける。
彼らが来たときに発見してくれるといいのだが。
パーカーのフードを目深に被ると、ふわりと彼の香りがした。
船を離れて数時間しか経っていないのに、懐かしさに胸を締め付けられるような気がした。
それを振り切るように、モモは早足で街へと歩き出した。