第2章 演練
2
次の日、男は見事なまでの二日酔いに見舞われていた。
「たーいしょ、いい加減起きな…って、なんだ起きてんのか。」
「ああ、薬研か。おはよう。」
「おはよう。それにしても酷い顔だな。二日酔いか?」
中々起きてこない男を起こしに来たのは、ここの古株である薬研藤四郎であった。
男は起き上がったものの、どうやら二日酔いによる頭痛で動けなかったらしい。
眉間には皺がより、その人相といえば最悪だ。
「吐き気は?」
「少しだけ」
「頭痛は…聞くまでもないか。薬とってくる。」
「すまない」
「そう思うんなら程々にしてくれ。」
薬研藤四郎が襖を開けたまま薬を取りにと立ち上がる。
つくづく薬研には頭あがんねえな、と男は思うのだった。
薬研藤四郎の足音が聞こえなくなってから、男は再び布団に横になった。
何だかひどく体が重い。気怠い。
原因は二日酔いだけのせいではない。
昨日の鶴丸国永とのやり取りだ。
どうせなら記憶がなくなるほど飲んでしまえばよかった。
男は考えれば襲ってくる胸の痛みを、唇を噛んでやり過ごす。
鶴丸国永に会って、いつも通り平然としていられる自信がなかった。