第3章 閑話休題:山姥切国広
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次の日、残りの演練も終え、後は本丸へ帰るだけだ。
山姥切国広の横を歩く主とにっかり青江は、先程からこちらがうんざりする様な内容で言い争っている。
堪らず山姥切国広は口を挟む。
「…あんたはそろそろ黙ったらどうなんだ。」
しかし効果はなく、それどころか火をつけてしまったらしい。
じぇーけーとは何たるかを語り始めた主に、山姥切国広は足を止めて後ろを歩いている四人に合流した。
「彼は一度はらきよするべきだと思うんだが…」
「大将は欲求に忠実だからなあ」
「薬研、そんなに遠回しに言わなくていい。あれはただの変態だ。」
薬研は主を甘やかしすぎだ。
とは口に出さず心の中に止めておく。
自分だって何だかんだ甘いのは、周囲にも知れ渡っているからだ。
薬研藤四郎が急に前を歩く主のもとへ向かい、大好きだと告げる。
それにかんばせを赤くさせる主に、山姥切国広は頬を緩めた。
単純な人だ。でもそんな主だから皆がついて行く。
薬研藤四郎を追うようにして一期一振が主の元へ向かうので、山姥切国広も早足でそれに続く。
ぽん、と一期一振が主の背を叩いた。
「しかし変態なのは頂けませんな。くれぐれも弟たちに変なことは教えないで下され。」
「…なんか、美人に変態って言われると興奮するよな」
「怒りますぞ」
そんなやり取りを繰り広げているのを聞いて、山姥切国広はげんなりする。
しかしそれと同時に、自分の心配が杞憂であったと分かり安堵に笑みを浮かべるのだった。