第2章 演練
「鶴丸殿!!」
突然。
一期一振の怒りを含んだ声が、広間にまで響いてきた。
それにビクリと大袈裟に反応したのは大太刀と脇差と男だ。
唯一薬研藤四郎だけが、何食わぬ顔でお茶をすすっていた。
どうやらこのお茶をお気に召したらしい。
一期一振の声は山姥切国広にも聞こえていたらしく、広間に顔を出しに来た。
「なんだ、一体」
「あ、国広。」
「今の声、一期一振か?」
「兄貴だな。大方、鶴の旦那が何かしでかしたんだろ。」
いち兄は怒るとこわい。
そう言っていたのは鯰尾藤四郎だったか。
どたどたどた。
地響きと共に足音が大きくなる。
こっちにくるつもりだ。
男は身の危機を感じて、山姥切国広のそばにさっと寄った。
びゅん、と目の前を通って行ったのは何だったのか。
それを考える間も無く、目の前を通ったモノは石切丸の顔にべちんと音を立てて張り付いた。