第2章 演練
食べ終えた後、男は食器を洗っていた。
隣では薬研藤四郎が朝餉の下準備をしている。
今日の夕餉は豚肉の生姜焼きに豆腐とネギの味噌汁、そしてポテトサラダだった。
やはりどれも絶品で、空いていたお腹は十分に膨れた。
洗い物を終え、石切丸と薬研藤四郎、にっかり青江と四人でひと息つく。
石切丸が淹れてくれたお茶は、程よい苦味が効いていてうまい。
この四人で喋ることとなると、専ら怪談話になる。
その為か、怪談話の苦手な山姥切国広は自室で刀の手入れをしているらしい。
愛いやつめ。
男は茶を啜った。
「主は怪談とかあまり怖がらないね」
石切丸が言った。
隣に座っているにっかり青江も頷いている。
「ああ…、何ていうか俺びっくりする位霊感ねえんだわ。」
「霊力はそんなにあるのにかい?」
「そうなんだよ。視線感じるとか見られてる気がするとかいったこともなかったし、金縛りとか怪奇現象も身の回りで起きたことねぇし。」
「そりゃあまた…」
「後はあれだな、友人と有名な心霊スポットになってるトンネルも行ったことあるんだが、なんも感じなかったなあ。友人は何か見えたとか言って半泣きになってたけど、俺には普通のトンネルにしか見えなかった、とか。」