第10章 雪解け
今日は冬でありながら風が吹いてないせいか、かなり暖かい。
わずかに溶けている雪がその暖かさを物語っている。
だから洗濯しようと意気込んだのはいいが、男はそこで固まる。
手には鶴丸国永が普段寝間着として着用している着流し。
彼は冬になってもスウェットを着用しない、男の本丸では数少ない一振りだ。
男は鶴丸国永の見た目も大好きなのでスウェット姿も見てみたいと思うのだが、やはりこの黒の着流し姿がどうにも格好よくて未だにドキドキしてしまうのでもう暫くは着流し姿でいてほしいと思っている。
しかし今はそれはいいのだ。
問題はそこではない。
この手に握られている着流し。
これは鶴丸国永が連日身につけていたものであり、つまりそれには彼の匂いが染みついているというわけで。
変態くさいのは重々承知である。
しかし男はここ最近鶴丸国永を避けているため、もうずっと触れてなければ目を合わせることも近づくこともなかったので、禁断症状のようなものが出ているというか何というか。
端的に言うと鶴丸不足なのである。