第8章 崩壊
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「雪か…」
にっかり青江は以前とは違う静かすぎる本丸の大広間から、外を見て呟いた。
ついこの間まで夏だったのに、薬研藤四郎が折れた日から本丸の天気や季節はめちゃくちゃだ。
本丸の天気や季節は基本審神者が好きなように設定できるのだが、それは精神が安定していればの話らしい。
にっかり青江の主である男は存外神経が図太く、今までこんなことはなかったため刀剣たちは困惑していた。
「どうりで冷えるわけだ」
にっかり青江の隣で、歌仙兼定が言う。
刀剣男士は人間よりも身体が頑丈にできているのでこの位で体調を壊すことはないが、人間である男は違う。
本丸にいる刀剣は皆主のことを心配していたが、本人に直接気遣う言葉をかけるものはいない。
歌仙兼定は暖をとるための火鉢を畳の上に置き、湯たんぽをにっかり青江に手渡した。
「さすがにこれだけ温度差があると参るね」
「全くだ。せめて季節だけでも安定してくれればいいんだけど」
にっかり青江の言葉に肩を竦めて歌仙兼定は賛同する。