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大切な貴方(アルスラーン戦記)

第24章 犬猿の仲②



『あら…あらあらあら、ヒルメス様ではありませんか。噂によると、膝をついたらしいですわね?…クスッ』


「…………。私も聞いた話によると、黒光りするヤツを見て発狂したらしいな…フッ」


ピシッ…


場が凍りつくとは、このことだろう。
犬猿の仲として仲間内では知らぬ者なし、と皆に言われると銀仮面卿ことヒルメスである。
その日は偶然にも王宮内で、ばったりと出会(でくわ)した。まぁ、二人きりではないのだが…

「ヒ、ヒルメス様。あまりにも女性に対して…」

「ザンデ。お前は目の前にいるのが、女に見えるのか?」

その瞬間、のこめかみにピキッと筋が出たのをエラムは見逃さなかった。

『…お久しぶりです、ザンデ様。先日は、ありがとうございました』

ニコッと微笑まれると、ザンデは頬を淡く染めた。

「い、いえ…」

「ヒルメス様。何故、そのように様に突っかかるのです?」

『エラム、仕方ないことなのよ。私とヒルメス様は水と油。絶対に意見が合うことはないと思うわ』

「ふっ、普通の女なら熊など倒さん」

その言葉に「く、熊っ!?」と、ザンデが目を見開いて驚いた。

「ヒルメス様。それは少し間違っております」

「なに?」



「様は剣は持っておりましたが、視線で追い払っただけにございます」



………。



再び、場が凍りついたのは言うまでもない。


『…エラム?』

「ほ、本当なのですか…?殿」

『えぇ。…こんな私ではいけませんか?ザンデ様…』

「うっ…い、いい…いけなくなど!」

「ザンデ」

「は、はい!」

「ザンデ様も忙しいですね」


漫才のような会話も一区切りをつけたところで、歩き始めた。すれ違い様に、二人は少し言葉を交わした。

『貴方に女扱いされずとも、私にはナルサス様がいらっしゃいます』

「膝をついたのは、TVでの演出だ。視聴率の為なら、膝をつくこともいとわぬ」

『では、そういう事にお互いしておきましょう』

「ふっ、そうだな。珍しく気があった」

『明日は、土砂降りですわね』

「全くだ」


(そんなに殿が嫌いですか?)(……嫌いだ)(その間は…)(うるさい)

アトガキ
視聴率の為なんですよ。ダリューン様も、視聴率の為に仕方がなかったんです(笑)
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