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大切な貴方(アルスラーン戦記)

第23章 怖いもの



「ッ!?どうした!!」

床に入る前、急にの声が響いた。
それを聞きつけたエラムも、明日の下拵えを投げ出しとんできた。

「様!いかがされました!?盗人ですか?」

『…ちが…違う…』

「…?では、何か倒れましたか?」

『…(フルフル)』

首を横に振り、言葉を発する事が出来ないほどの恐怖を感じているに、ナルサスとエラムはジッと彼女を見た。熊でさえ倒す彼女に、そこまで恐怖を感じさせるものは何なのか…
二人は驚いている。
エラムは、が先ほどまで居たであろう洗面所のところを見に行った。


「、大丈夫だ。私がいるから何も怖くない。さぁ、ゆっくり息を『息などしてる場合ではありません!!』してみなさい…。何をそんなに慌てているのだ?」


すると、エラムが戻ってきた。

「ナルサス様。特に何もありませんでしたが…」

「そうか。何があったのだ、?」




『…"ヤツ"が…い、居たんです…』




ゆっくりと震える唇で、そう呟いた。

「"ヤツ"?誰だ?」

『ナルサス様…ダメです。私…もう、この…この家には居られません!!』

いきなり何を言い出すのかと二人は言葉を失った。

「ナルサス様。まさか…誰か女性を…」

「馬鹿を言うな。私は、そんな事はしていない」

『ヤツが居るってことは…他にも…』













カサカサ…











『…き、きゃぁぁぁ!!』










そう叫んで、ナルサスの首に抱きついた。

『ほ、ほら…ぃ…今…カサカサって…』

「まさか、様が恐怖を抱くほど怖れているのは…」

「ッ…く、く…首が…絞まっている…」

そんなナルサスの言葉は、の耳には入っていないようだ。




『Gに決まってるじゃない!!あの黒光りしてカサカサ音をたてて、私達に迫って来るのよ!!エラム!なんとかして!!』



「は、はぁ…何とかしますが…

まずは、ナルサス様を離して差し上げた方が…」

『へ?

きゃっ!

ナルサス様!ナルサスさまぁぁ!!ごめんなさい!息をしてますか!?』

「…一瞬、花畑がみえたが…大丈夫だ」

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