第1章 やはり夫婦
「『何故とは?』」
二人で声を揃えて返事をした。その二人とは、夫婦になってから1年が経とうとしているナルサス、の夫婦である。
「……」
それを冷ややかな目で見ているのは、ダリューンだ。
「お主、どこに目をつけているのだ。こんなに素晴らしい風景を書いているではないか」
『そうですよ、ダリューン様。こんなに素敵な絵ですのに』
どのあたりが風景なのだ、と返すに返せない返事を考えている。エラムに助けを求めようと視線をやるが、いつもの事だと料理の下ごしらえをしていた。
はぁ…殿。何故、貴女には"それ"が風景に見えるのだ
以前、アルスラーンが"それ"を見た時には、まさに目が点になり気絶した事をダリューンは思い出した。
『さすが、私(わたくし)の旦那様ですわ。知識、剣術もさることながら、絵の才能も兼ね備えておいでで…嬉しゅうございます』
「何を申す。こそ、私の絵を理解してくれる奥方で、嬉しいぞ」
また始まった。
こと絵に関して、話始めると二人の世界にとっぷりと浸かってしまい、甘い空気さえ出てくるのである。所謂、ノロケ状態なのだ。この空気がダリューンは苦手である。ナルサスとが苦手な訳ではない。絵の話で盛り上がる二人についていけないのと、嬉しくもないノロケ話を聞かされるのが嫌なのだ。
もう、何も言う気にもならん。早く帰って、風呂にでも浸かろう。
やはり夫婦だとしか思えないダリューンであった。
(ナルサス様、ダリューン様は?)
(何やら、疲れた顔をして帰ったぞ)
(あらあら、せっかくエラムが夕飯を準備してくれたのに。ねぇ、エラム?)
(は…はぁ(ダリューン様、お疲れ様でございます))
アトガキ
ダリューン様も格好いいのですが、私としてはひねくれ者のナルサス様が大好きです(笑)