第12章 堕ちていく恋心/明智光秀◇(夢主side)其の2
「部屋で待っていろって言ったろ?」
「あらっ。いつまで待ってもお迎えに来てくれないんですもの。待ちわびてしまったわ」
「ったく……星が流れ始めたら呼びにいくつもりだったんだぞ」
「星はまだ?……くしゅんっ」
「風邪をひくだろう。今宵は特に冷え込む」
「ありがとう」
自分の羽織を姫君にかけ、微笑み合う2人を見ているだけで胸が苦しくなる。
もう、これ以上
この場にはいたくない。
幸せそうな2人を見ているなんて……
「愛香……」
不意に身体が宙に浮き、光秀に横抱きをされていた。
「顔色が悪いようだ。残念だが、今宵の星は諦めろ」
「……うん」
光秀の「諦めろ」
その言葉が違う意味で言っているようで、涙が溢れてきてしまう。
2人に悟られたくなくて、光秀の胸に顔を埋め首に腕をまわした。
お願い
早く此処から連れ出して……
「俺達はこれで失礼する。愛香の調子が悪いみたいだからな」
「愛香、大丈夫か?」
お願いだから、そんなに優しい言葉をかけないで
余計に苦しくなるの。
秀吉には愛する姫君がいるんでしょう?
だったら、私なんかに優しい言葉をかけないで
貴方が誰にでも優しいのは知っているけど
私にだけは、優しくしないで。
私を嫌いになって……
溢れでる涙は決して止まらない。