第49章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/光秀
まったくもう……!
光秀さんったら酷い。私の事をからかって。
さっきのやり取りを思いだしたら、腹がたつやら恥ずかしいやら……複雑な心境。
『今宵のお前の体と時間を───俺に捧げてくれ』
『それって……つまり……私と……?』
『お前と……?なんだ?』
『え……?だから、その……つまり……私と
(愛し合いたい……的な?)』
『何を思い違いしてるのか知らんが、酒の用意をしてもらいたいだけだが?』
『……え?』
───ニヤリと笑う光秀さんの顔を見てすべてを悟った私は顔から火がでるくらいに熱くなってしまった。
つまりはこういう事よね。
私にお酒を用意して光秀さんの所に運べっていう事でしょう?
(どうして素直に言ってくれないのかしら?あんな言い方をされたら誰だって勘違いしちゃうじゃない)
光秀さんの部屋の前につくと、自分自身を落ちつけるように深く深呼吸をしてみる。
(まだちょっと変なドキドキ感はあるけど、さっさとお酒を失礼させてもらいましょう)
「光秀さん……愛香です。入ります」
光秀さんの返事を待たずに襖を開け、中へと入っていく。
部屋の主である光秀さんは、蝋燭の灯りのもと筆を走らせていた。
「頼まれた物は此処に置いておきますよ」
光秀さんの手が届くくらいの距離にお酒を置くと、返事はかえってこない。
忙しいみたいだからしょうがないよね。
そのまま立ち去ろうとすると手首を引かれ、体制を崩した私は光秀さんの膝の上に───
あれ?
どうして?