第1章 いらっしゃいませ月山さん。
「おい、カネキー」
錦先輩に呼ばれたので何となく気になるけれど仕事に戻った。
「では、僕はもう帰らせて頂くとするね?」
一時間後、月山さんは3杯目の珈琲を飲み干して席を立った。
「おい、待てよ月山...今の話、本当だろうな?」
ありがとうございました、と僕がマニュアル通りに頭を下げるとトーカちゃんが彼を引き止めて尋ねる。...何の話だろうか。僕は聞いても良いのかな...離れるべき?どうしようか悩んでいると月山さんはぽふっと僕の頭に手を置いた。
「すべて本当さ、カネキくんには君から伝えておいてくれたまえ...僕は恐がられているみたいだからね。まったく心外だが。」
「てめェがカネキを喰べようとしたからじゃねェか、自業自得だ。ってかカネキに触ンな変態。」
トーカちゃんの鋭い睨みを軽く受け流して月山さんは僕の頭から手を退けた。
「それでは、また会おう。」
カランッ、と音を立てて扉を開閉して出ていった彼を見送り、僕はトーカちゃんを振り返った。
「今の話って...?」
ふぅっとため息を吐いてトーカちゃんは僕を見つめた。
「また、お前を狙ってる喰種がいるらしい...それも、数人。」
「狙う...喰べようとしてる、って事?」
「あぁ、そうみたいだ。取り合えず、暫くは私が付き添って行動する。」
「うん...ありがとう、ごめんねトーカちゃん...」
まただ。また、僕は守られて。もう嫌だ...守られてばかりなのはもう、嫌なんだ。強く、ならなきゃ。