第6章 貴方に会いたい、月山さん。
僕は"アオギリ"で酷い扱いを受けていた。合間無く与えられる痛みで叫びすぎて喉が渇れた。剥がされた両手両足の爪は綺麗に生えきらず真っ黒に変色したままになった。ヤモリが居ない間に口から喉に詰まった血を吐き出す。もうこのまま死ぬのか、と思う。すると何故か...ふと、彼に会いたくなった。
「...つきやま、さん...」
居ないのは分かっているが小声で呼んでみる。再び、壊れそうな思考回路を繋ぎ止めるために呼ぶ。
「...つきやま、さんに、あいた、い...」
ガチャ。ドアの音がする。一人で幸せな時間を思い出していれたのも束の間、帰ってきたヤモリを睨み付けた。
そして。
「僕を食べようとしたんだから、僕に食べられても仕方ないよね?」
ヤモリを、食べた。ヘドが出るほど不味いその肉をひたすら貪った。力を回復させ、赫子を引き摺って外へ出る。久し振りの外の空気は美味しかった。彼に、会いたい。でも、まずはトーカちゃんを助けなきゃ。屋上でトーカちゃんと"アオギリ"幹部であり彼女の弟であるアヤトくんが戦っていた。お互いの羽赫を閃かせながら戦う彼らの間に僕は滑り込んだ。トーカちゃんを抱き抱え、その目を覗き込む。
「...かね、き...?」
僕を何処か不思議そうに見つめる彼女の瞳に写る僕の自慢だった真っ黒な髪は、見る影もなく...真っ白になって、いた。