第20章 たまにはブレイクタイムも必要で
「今日はありがとうございました」
女は昏葉に丁寧にお辞儀をした。
「こちらこそ、楽しかったわ」
昏葉がそう言うと、女は勢いよく体を起こした。
「あの……またどこかで会ったら……一緒に呑んでくれますか?」
「もちろんよ」
女は嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!」
先程まで泣いていた女は今では笑顔になっている。
「明日も仕事なの?」
「はい。でも、昏葉さんのおかげで頑張れそうです」
「……そう」
辛い、しんどい、できないと嘆いていた彼女とは思えないくらい、今は溌剌としている。
「……たまには休憩も必要だものね。私は大体、ここのバーにいるから何かあったら来て」
「はい!」
女はもう1度頭を下げた。
「それでは!」
歩きながら手を振る女に昏葉は手を振り返す。
「……」
人の悩みなんて人それぞれだ。休みは誰にだって必要だ。
(戦争をしていた時は……そんな風に考えられなかったな……)
ーいつもいつも殺されるかもしれない、攻められるかもしれないという緊張感の中にいた。休むことなんてなかった。
「……私たちがやったことは……」
ー少しは誰かのためになったのだろうか……。それとも……。