第3章 何よりも自分の命を大切にしろ 〜白夜叉と紅〜
新八に案内されて、昏葉は銀時の向かい側のソファに座った。
「お茶です」
新八は昏葉の前にお茶を置いて、そっと彼女の姿を盗み見た。昏葉は鎖骨よりも少し長めの綺麗な黒髪を後ろで束ねて留めている。その姿が大人びていて、年齢よりも若く見える彼女の顔とのギャップに少しドキドキする。
「ありがとう」
昏葉はにこりと優しく新八に笑いかけた。
「は、はい!」
大きな声で返事をする新八を見て、クスクスと笑いながら湯飲みに口をつけた。
「それで?」
「ん?」
銀時は背もたれに手を置いて、だるそうな様子で昏葉を見た。
「ここに何しに来た? お前は日本中を旅するって言って脱退したんじゃなかったのか?」
「えェ、そうよ」
湯飲みをトンッと置いて、銀時を見据えた。
「旅の途中でたまたま江戸に用事があったから寄っただけよ」
「ふーん」
銀時は半目で昏葉を見つめている。その様子を見て、少し困ったように昏葉が笑った。
「……信じてないみたいね」
「あァ」
口端を上げてニヤリと笑いながら、銀時は目の前にいる女を軽く睨んだ。
「そりゃー、お前、何年の付き合いだと思ってんだよ。いろいろな苦労を分かち合った大事な仲間が思っていることをわかんないとでも思ったか?」