第19章 男女の契りは誰かに言いふらすことではない 〜待っている人〜
「ごめんくださーい」
昏葉は『万事屋 銀ちゃん』の家の扉を開けた。肩には銀時の腕を回しており、半ば彼を引き摺っている。
「昏葉! 銀ちゃん!」
奥から神楽が顔を覗かせた。そして、2人の顔を見ると走って近付いて来る。
「神楽ちゃん、ごめんね。こいつ、酒呑んで酔っ払ってて……」
「いつものことネ。送ってくれてありがとナ」
まだ10代の女の子にいつものことと割り切られている男を見て、昏葉はため息を飲み込んだ。
(……なんかな……)
情けないやら、なんやら……複雑に思いつつ、女は男を寝かせるために家へ上がろうと靴を脱いだ。
「ワタシ1人でも運べるアルヨ?」
神楽は男のもう片方の腕を自分の肩に回して、昏葉と共に銀時を運んだ。
「いいのよ。神楽ちゃんに悪いし」
銀時の部屋の襖を開ける。神楽は男の布団を引きずり出して、畳の上に敷いた。それから、昏葉は銀時を布団の上へ寝かせる。
「ふぅ、手伝ってくれてありがとう」
女は布団の横で立っている神楽を見上げて言った。
「こちらこそ、わざわざ送ってくれてありがとネ」
2人は部屋を出て襖を閉めた。
「じゃあ、私は行くわね。昨日、散々吐いてたからもう吐かないと思うけど……」