第16章 コスプレするなら心まで飾れ 〜今の幸せ〜
「銀ちゃん、私、ラーメン食べたくなってきたヨ」
「僕、寿司でいいですよ」
「馬鹿野郎、誕生日以外にそんなもん食えると思うなよ。……たくよ、重てェなァ、ちくしょう」
そのまま、男は港を歩いていく。
「……いいのか?」
「何が?」
その様子を港の大きい荷物の上から、昏葉と桂が見ていた。
「あいつについて行かなくてもいいのか?」
「……いいのよ」
夕陽に照らされ、目を細めた女はどこか哀愁が漂っている。
「私にその資格はないわ」
「……前にも言っただろ? 銀時なら……」
「分かってるわ。でも、この前も断ったの」
女は隣で座っている桂を見た。1つに括った黒髪が海風に吹かれる。
「どうしても……私の中でも、譲れないものがあるの。それに……あいつにも、新しく大切なものができたし」
3人の後ろ姿を見ながら、女は夕陽のように優しく微笑んだ。
(今度は、しっかり掴んでおいてね。銀時)
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