第11章 コスプレするなら心まで飾れ 〜良からぬ噂〜
『万事屋 銀ちゃん』を去ってから、数日が経過した。昏葉は高杉のテロについての噂を各所で聞き回っていた。
今日も昼から空いている、とある怪しげなバーに入った。そして、内密な話も聞けるようにカウンターの席へと座る。
「すみません、ホワイトレディーを1つお願いします」
「あいよ」
バーのマスターは女が注文すると同時に、カクテルを作り始める。
「どうぞ」
「ありがとう」
女は目の前に置かれたグラスを手に取り、口元へと運ぶ。グラスを傾けて、注がれた酒を喉へと通す。
「いかがですか?」
マスターはにこりと微笑んで、女の反応を待っている。
「とても美味しいわ」
女もにこりと微笑む。そして、2口目を口元へ運ぶ。
「……聞きたいことがあるんですけど」
「はいはい、何ですか?」
マスターは他の客が注文したカクテルを準備しながら、上機嫌で笑っている。
「ここら辺で、テロが起こるかもしれないっていう噂を……何か聞いてない?」
その言葉を聞き、マスターは目を細めた。
「テロ?」
「ええ」
女は笑って、カウンターのテーブルに頬杖をついた。
(……ストレートに聞きすぎたか……)
ーもう少し別の話題から話した方が良かったかもしれない。